玉手箱

ミートパイ


「東京駅の地下で懐かしいもの買った」
それだけのメールで、何を買ったのかが分かった
懐かしいもの、思い出のもの
言うなれば、ぼくたちのソウルフード

結婚翌年の1月
ということは、新婚3か月目
神戸に旅した
三宮のニューポートホテルに2泊

このホテルは
日本ドリーム観光チェーン
とあるから、千日前デパートと同系で、
千恵さんに券を貰ったのかな

その頃は、写真整理に熱心だったから
アルバムに記録が残っている
泊まったのは10階
最上階の回転レストランで食事をした

街中へも出かけた
当時は何処でもマッチを呉れたから
何を食べたか
店名、所在地ぜんぶ分かる

三宮北長狭通「らんぷ亭」で牛肉バタ焼き
中山手1丁目「にしむら」でコーヒー
三宮神社前「糸平」で鰻
重いメニューに若さがあるね

夜も街に出た
53年前だから、まだ、神戸の夜を彩る
ルミナリエもイルミナージュも
ライトメッセージも無かったが
元町近辺を散歩した
夕食後のそぞろ歩き
冬の夜だが、寒かった記憶はない
楽しかったのだ、と思う

生涯の思い出になる
小さな出来事が起きたのは
その時だった
決して忘れることはない

元町1-4-13に
ユーハイム本店がある
散歩の最後、ホテルに戻る前
ちょっと立ち寄った

たぶん、デザートを買おうとしたのか
部屋に戻って食べる
プリンか軽いケーキ
のはずが、目についたのが

美味しそうなミートパイ
若かったからだろう、食後でも
食べたくなって、
意見が一致して

注文しようと
先客の後ろで待った
店員が前の客の注文を聞いて
ミートパイを袋に入れている

ケースには10個以上はあった
そのミートパイが
あ、あ、と見ているうちに
次々に減ってゆく

そして、ついに
全部無くなくなってしまった
ひとつ残らず、
前の客が買ってしまったのだ

何も買わずに店を出た
なぜか笑っていた
清々したような
不思議な気分だった、ような気がする

ユーハイムのミートパイは
創業時からあったという
その定番ミートパイは
100周年を記念して生まれ変わったという

ユーハイムの創業は1909年だから
2009年が100周年だったとすると
今から11年前に「神戸牛ミートパイ」に
変わってしまったのだ

どう変わったか。
小型になって、高価になった
限定店舗でしか買えない。
ユーハイム・ホームページで調べたところ

「神戸牛ミートパイ」販売店舗は3店のみ
東京駅グランスタ店
日本橋高島屋SC店
千葉駅構内ペリエ千葉店

すぐに売り切れて
何時でも買えない
今も、幻めいたミートパイ
二人にとっては伝説
 今夜の「お食後」は、お土産のミートパイやな。     

 2020.8.25